胃カメラの苦しさの要因はおもに以下の3点です。
1.咽頭(ノド)の反射・痛み
これが最大の苦痛です。とくに口から挿入する胃カメラでは非常に強くなります。
2.鼻の痛み
経鼻内視鏡のみにみられる苦痛です。
3.前処置の苦痛
前処置(検査前の咽頭・鼻腔の麻酔)のときの苦痛です。とくに経鼻内視鏡では鼻腔麻酔をするときに鼻痛を誘発することがあります。
胃カメラには経口法(従来から行われている口から挿入する方法)と経鼻法(2003年に開発された鼻から挿入する方法)の2つの挿入法があります。さらに経口法には咽頭麻酔に加えて静脈麻酔を使い意識のない状態で検査を行う方法(セデーション)があります。一般に、苦痛の少ない胃カメラとは“経鼻法”と“セデーションによる経口法”を意味します。
現在、苦痛の大きな経口法は大学病院などの大病院でおもに行われています。経口法のメリットは、前処置やスコープ操作が簡便なため、短時間に多くの検査をこなすことができることです。大病院はもともと患者数が多いので苦痛があっても受診者が減ることはありません。しかし、検査の苦痛が強いと患者さんが減少してしまう小さな医療機関(クリニックや小病院)では苦痛の少ない胃カメラを行ってる施設が多いようです。
それでは苦痛の少ない2つの検査法について解説します。
1.セデーション下(意識を落として行う)経口法
検査中の意識がないためもっとも苦痛の少ない方法です。しかし、静脈麻酔薬は心臓や肺に悪影響を及ぼし、検査中に血圧が下がったり、呼吸が弱くなることがあります。また、患者さんは意識がないので、苦痛や体調の変化を検査医や看護師に伝えることもできません。そのため、苦痛はまったくないのでしが、とても危険な方法と言えます。また、検査後も麻酔薬の影響が残るので1~2時間程度ベッドで寝ている必要があります。もちろん、車での帰宅は厳禁です。胃カメラによる医療事故の多くはセデーション経口法によるものが大部分と言われています。すなわち、セデーション経口法は苦痛はないが検査に伴うリスクが高い検査法です。内視鏡室に複数の医師と多くの看護師がいるような大病院では安全に行うことはできますが、医師が1人で行う開業医ではリスクが高い検査法と言えるでしょう。
2.経鼻法
鼻からスコープを挿入するため、スコープをスムーズに食道に挿入することが可能です。そのため咽頭の負担が少なく疼痛や咽頭反射(咽頭を刺激されてオエッとする反射)を抑えることができます。また、マウスピースをくわえる必要がないので検査中に医師と会話をすることができることもメリットです。経鼻法の欠点は不十分な前処置による鼻痛や丁寧なスコープ操作が必要となるため経口法よりも検査時間は長くなることです。同じ経鼻法であっても施設によって鼻腔麻酔法や検査医のテクニックに違いがあり、かえって鼻痛・鼻出血によって経口法よりも苦痛が大きいこともあります。当クリニックでは、鼻痛を抑えるための特殊な備品(ノーズピース、DPスティックなど)を使用し、咽頭痛を誘発しないテクニックを駆使して苦痛を最小限に抑える経鼻内視鏡を行っています。
当クリニックでは苦痛を最小限に抑えた経鼻内視鏡を目指しています。以下に当クリニックの取り組みについてご説明いたします。
1.確実で苦痛の少ない前処置
短時間で確実な鼻腔・咽頭麻酔ができる「2分間鼻腔麻酔法」を開発しました。他の施設よりも少量の麻酔薬で効果的な前処置を行っています。
2.最新のスコープを使用
以前は、経鼻内視鏡は画質が悪いので病変を見逃すのではないかと言われていました。しかし、最近の光学技術の進歩で経鼻内視鏡用のスコープの画質は飛躍的に進歩し、通常の経口法のスコープの画質と同等以上にました。当クリニックは現在最高のスコープである富士フイルム社製レザリオEG-580NW7を使用しています。