大原ファミリークリニック
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 0.5 U/mL まで測定できる“高感度測定法”の開発

 
● 重要なのは 3.0 U/ml 未満の領域
 血清ピロリ菌抗体価の測定キットとして Eプレート‘栄研’ H.ピロリ抗体Ⅱ(栄研化学社)がもっとも多く使われています。Eプレートの測定可能範囲は 3~100 U/mlです。抗体価が測定下限である3.0 U/mLを下回るとすべて3.0U/ml未満と表示されます。もともと、Eプレート検査の目的は測定時のピロリ菌感染の有無を調べることにあり、カットオフ値10 U/mLで感染のありなしを判定します。そのため、3.0 U/mL未満の数値がわからなくてもまったく問題はありません。
 しかし、胃がんリスク(現在胃がんがある、または将来胃がんになる危険度)の観点からは、ピロリ菌未感染(過去に一度もピロリ菌に感染したことがない)はリスクが低く、現感染(現在ピロリ菌に感染している)と既感染(過去に感染していたが現在は感染していない)のリスクは高いことがわかっています。既感染の抗体価はピロリ菌死滅後に徐々に低下しその多くは 3.0 U/ml 未満になります。そのため、未感染と多くの既感染の抗体価が分布する抗体価 3.0 U/m 未満の領域が重要となります。
 
● “高感度測定法”の開発
  ELISA法(血液中のピロリ菌IgG抗体の濃度を測定する方法)によるEプレートの測定原理は、標準ピロリ菌抗体3、10、30、100 U/ml の吸光度を計測し4点で標準曲線を作成し、次に検体血清の吸光度を計測し標準曲線から抗体価を算出する。このため、Eプレートで保障される測定範囲 は 3~100 U/ml となり、3.0 U/ml より低値はすべて3.0 U/ml 未満となります。(図1)
 私はEプレートの製造販売会社である栄研化学社に3.0 U/mL 未満測定の重要性を説明し、関根様(栄研化学社)にご協力を頂き、0.5 U/mLまで測定可能な“高感度測定法”を開発しました。具体的には、標準ピロリ抗体に0.5、1.0 U/ml を追加して6点で標準曲線を作成し、測定範囲を下方に延長して0.5~100 U/mL の範囲で実測可能な方法を開発しました。(図2)
 

 
図1 標準ピロリ菌抗体3,10,30,100 U/mLの場合の実測範囲と推定範囲

 
 

 

図2 標準ピロリ菌抗体0.5,1,3,10,30,100 U/mLの場合の実測範囲と推定範囲